ドイツの治安を事件を見ながら考える

ドイツの治安について

ドイツって実際は安全なの?

一般的に世界的にみて治安がいいとされるドイツですが、ミュンヘンに限って言っても、後日知って肝が冷えるような事件が身近で起こっていた、ということは多々あります。また、ドイツ全体で見ると、移民政策や難民受け入れを機に治安が悪化したと言う意見がメディアを賑わすことも。そこで今回は、ドイツ国内で起きた事件を引き合いに、安全に過ごすためにはどんなことに気をつけるべきか、紹介していきたいと思います。

1. 公共交通機関に関連する事件

  • ハンブルク中央駅における無差別ナイフ攻撃(2025年5月23日)
    混雑するプラットフォームで、39歳のドイツ人女性が無差別に通行人に襲いかかり、17人が負傷。重傷は6名で、容疑者は精神不安定の可能性があるとして現在拘束中とのこと。
  • ICE列車内でのハンマー攻撃(2025年7月)
    ハンブルク発ウィーン行きのICE列車で20歳のシリア人男性が乗客4名をハンマーなどで襲撃。うち3人はシリア人、1人は不明。非常ブレーキが引かれ緊迫した状況となった。
  • 列車や駅での暴力・性的暴行の増加
    連邦警察(BKA)の統計では、2023年には25,640件だった駅での暴力事件が、2024年には27,160件に。特に性的犯罪は1,898件から2,262件と増加傾向にある。

ドイツでは、ICEと呼ばれる日本で言う新幹線のような電車がドイツ国中を繋いでいます。私自身も遠方に出かける際によく利用していますし、特に家族のいるハンブルグに行くために年に数回は必ず乗車しています。それでびっくりしたのが上記の事件。特に走行中の列車での事件なんて恐ろしいですね。私は4年住んで、一度も身の危険を感じるようなことに遭遇したことはありませんが、実際には駅での暴行事件などは増加傾向にあるようです。ドイツの主要駅のほとんどで24時間電車が走っていますが、人が多いと言うことはそれだけ犯罪に遭遇する確率も上がると言うもの。深夜帯の移動を予定している場合は、酔っ払いも多いので気をつけることも変わってきますが、できるだけ明るい場所で待つこと、ヘッドフォンをつける場合は、周りの音が聞こえる程度に留めることなどの注意が必要です。

そして、電車内での荷物の置き引きもよくある話です。ICEをはじめ、ドイツの電車には、荷物を置くためのラックが設けてあり、大きなキャリーなどは専用の棚に置くこともありますが、この棚から荷物を盗んでいく人もいます。また、日本人がやりがちとも言える、荷物を床や座席に置いた一瞬をついて盗まれるなんてことも。荷物を置く必要がある場合は、荷物と棚をくくって固定できる鍵を持ち歩いたり、必ず自分の視界に入る場所に置く、などの対策を取ることをお勧めします。


2. 公共の場における暴力・凶悪事件

  • ベルリン・ホロコースト記念碑での刺傷事件(2025年2月21日)
    ベルリンのホロコースト記念碑にて、シリア人の19歳が背後からスペイン人観光客(30歳)をナイフで襲撃。被害者は重傷を負ったが命に別条はなく、犯人はすぐに逮捕された。「ユダヤ人を殺したい」という反ユダヤ主義動機が示唆されている。
  • ライン川付近での刃物傷事件(2025年2月12日)
    NRW州のラティンゲンにて81歳男性が刃物で重傷を負い、犯人は特殊部隊との応酬の末、警察に撃たれて重体に。動機や背景は調査中。
  • オッフェンブルクでの殺人事件(同日)
    フランス出身の女性心理療法士(37歳)が自宅近くで刃物によって致命傷を負い、42歳のドイツ人男性が殺人容疑で逮捕。捜査は継続中。
  • ミュンヘン市内での車両による襲撃未遂事件(2025年2月13日)               ミュンヘン市内で、ライフルを持った男が警察官を襲撃しようと試みたが、警察の迅速な対応により未遂に終わる。この事件は、ドイツ国内での治安状況の厳しさを示すものとして注目された。

公共の場で起こった無差別の殺傷事件に関しては、もはや防ぎようもないような気もしますが、毎年ドイツのどこかの都市で割と大きめのテロのような殺傷事件が起こっています。私もミュンヘン市内で、警察車両が多いなぁと思っていたら、家に帰ってから訪問先近くでデモ隊に乗用車が突っ込むと言う事件が起こっていたりしました。

こういった大規模な事件に巻き込まれるかどうかはもはや運としか言えないような気もしますが、外務省の旅レジと言うメーリングリストに登録しておくと、大型デモやサッカーの試合など人が多く集まり、テロの危険性が高まるイベントなどをお知らせしてくれます。そう言った現地情報を、単なる情報としてとらえず人混みを心がけて避けることも重要かもしれません。

殺人事件などは、2022年のドイツ全体の殺人(殺人・殺人未遂を含む)の報告数は 約2,600件で、実際に死亡したケース(既遂の殺人)は 約320件ほどとされます。これは、人口100万人あたりの殺人率は 約0.9件と欧州平均よりやや低め。参考までに、日本は 人口100万人あたり0.25件前後とのことです。つまり、ドイツは日本よりは高いが、国際的には低水準です。(ちなみにアメリカはは約5件/100万人、メキシコやブラジルでは20件以上/100万人に達することもあるのだそう。)


3. テロ未遂・極端思想による脅威

  • ベルリンでのイスラエル大使館を狙ったテロ未遂(2025年2月20日逮捕)
    ロシア国籍の男性が、ISへの支援やイスラエル大使館攻撃の計画で起訴。爆弾製造の指示を調べていた形跡があり、今後裁判が進行する予定。
  • ソリンゲン 刺殺事件(2024年8月23日)                          ノルトライン=ヴェストファーレン州ソリンゲンの「多様性フェスティバル」会場で、26歳のシリア人男性がナイフで3人を殺害、8人を負傷。動機は、「イスラム国(IS)」による犯行とされ、犯罪後にISが責任を主張。
  • 車突入事件(マクデブルク クリスマス市、2024年12月)                  50歳のサウジ出身の医師がBMWでクリスマス市に突入し、6人死亡(うち子ども1人)、多数が負傷。過激思想との関連は確認されていないが、反イスラム的・極右的傾向が指摘されている。
  • 「サクソン独立主義者(Saxon Separatists)」によるクーデター計画(2024年11月)     極右組織がナチス体制を模した独裁政権樹立を目論み、軍事訓練や武器大量準備を行っていたとして、複数の関係者が逮捕。
  • 「ライヒ市民(Reichsbürger)」系のクーデター未遂(2022年12月)            ヒンリヒ13世ライヒ公などが関与し、政府転覆と君主制復古を目指すクーデターを計画。計25人以上が逮捕され、大規模な警察作戦により摘発。
  • その他、阻止されたイスラム過激派の襲撃計画>                      2010年以降、BKA(連邦刑事局)が「イスラーム主義」動機の襲撃を約18件阻止(爆弾・毒物・射撃など)                                        2023年には、複数のハマス系組織やISISによる計画が摘発され、ケルン大聖堂襲撃やユダヤ関連施設への攻撃未遂など多数が含まれる。                           2024年には、シリア人青年によるドイツ軍施設へのマチェーテ襲撃計画や、10代によるクリスマスマーケット襲撃計画が摘発されている。

先ほどにも通じることですが、こう言った事件はもはや個人が気をつけてどうにかなるものでもありませんよね。ドイツはNATOの主要メンバー であり、アフガニスタンやシリアでの軍事作戦に参加してきました。そのため、「西側の一員」としてイスラム過激派の敵視対象になりやすい面もあるそうです。例えば、テロ組織ISのプロパガンダでは「米国・フランス・ドイツを敵」と名指ししています。また、ドイツ政府は歴史的背景から、イスラエル支持を国是としています。このため、イスラエル関連施設(大使館、領事館、シナゴーグ) が攻撃対象になりやすく、近年の事件(例:2024年ミュンヘンのイスラエル領事館近く銃撃事件)も、こうした構図に基づいていると言われています。国内でテロなんて、ほぼ無縁の日本人からしたらとても驚く情報です。

また、ドイツは欧州最大の移民受け入れ国の一つです。大多数は平和的に生活していますが、一部の若者が孤立感・差別・貧困を背景に過激思想に傾倒するケースがあり、過激派にリクルートされる例も報告されています。やはり、孤立することはどこにいても良くないと言うことですね。コミュニティの一員であることを自覚することは、自分自身のメンタルヘルスにも作用するように思います。

ただし、移民や難民だけがテロの脅威ではありません。近年は、極右・極左の過激化も著しく、テロの脅威はイスラム過激派だけではなく、極右や陰謀論者(ライヒ市民など)からも生じています。反移民感情、反政府思想、陰謀論(「国家は存在しない」など)に基づき、政府転覆やユダヤ人襲撃を企図する事件が増えています。例えば、2022年の「ライヒ市民」クーデター未遂なんかがそうです。

国家転覆、クーデータなんて、どこか歴史書の中の話のように感じますが、法治国家、ましてや経済的にもヨーロッパを牽引する大国であるドイツにもそんな問題があるなんて。実際に危険を感じることはほとんどありませんが、ニュースを見て驚かされます。


このように、ドイツ国内では公共の安全に関わる事件が多発し、物理的暴力・極端思想・インフラ事故という多層的な側面から総合的な対応が求められています。しかし、重ねて言いますが、自分自身が危険を感じたことはほとんどありません。ただ、私は夜間に外出したり、一般的に治安が悪いと言われるエリアには近づかない、などある程度のリスクヘッジは取れているかなと思うので、一般的に見た安全上の注意点をまとめてみます。

日常生活での安全上の注意

<スリ・置き引き>

  • 特に 大都市(ベルリン、フランクフルト、ハンブルク、ミュンヘン) の駅や観光地で多発。
  • 犯罪統計でも 窃盗は最も多い犯罪類型
  • リュックは背中ではなく前に抱える、財布やスマホは前ポケットに、カフェで机にスマホを置かないのが鉄則。

<夜間の移動>

  • 日本のように「深夜でも女性が一人で歩ける」ほど安全ではない。
  • 公園・駅周辺・暗い路地は避ける。
  • タクシーや配車アプリ(FreeNow、Boltなど)を活用するのがおすすめ。

<公共交通機関>

  • Uバーン(地下鉄)やSバーン(近郊電車)では飲酒者や薬物使用者によるトラブルがあることも。
  • 2024年の統計でも駅構内の暴力・性的犯罪は増加傾向
  • 車内では目立つ行動を避け、トラブルには関わらないのが安全策。

< 詐欺>

  • ATM付近で声をかけてきたり、署名活動を装って近づくケース。
  • 観光地では「寄付」「アンケート」などを装ったスリが多い。

<性犯罪>

  • 統計上、ドイツでは性犯罪は増加傾向
  • 特に夜間のバーやクラブでは、飲み物に薬物を入れられる(ドリンクスパイキング)事件が時々報告されている。
  • 自分の飲み物から目を離さないよう注意。

<差別・偏見>

  • ドイツは移民が多い国で基本的に外国人慣れしていますが、地方の一部エリアや深夜の酔客からアジア人への差別的な発言を受ける可能性も。
  • トラブルになりそうなら反論せず離れることが最善。

以上、ドイツは国際的に見れば安全な国であり、殺人やテロに巻き込まれる可能性は非常に低いと言えます。一方で、都市部ではスリや詐欺といった軽犯罪、社会全体では家庭内暴力などの深刻な課題が残されていることも見過ごせません。

ただし、旅行者や在住者が日常生活で注意すべき点は限られていて、基本的な防犯意識を持って行動すればリスクは最小限に抑えられることでしょう。歴史ある街並み、美しい自然、豊かな文化や人々との交流を安心して楽しめる環境がドイツにはあります。少しの警戒心を持ちながら、ドイツ滞在を存分に楽しんみましょう!

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