皆さんにとって、教会とはどんな存在でしょうか? 私は日本に住んでいた頃も、有名かどうか、大きさにかかわらず、よく神社仏閣を訪ねていました。私にとって、歴史ある宗教施設は、美術館や博物館に並ぶようなもので、信心に関わらず心を豊かにしてくれる特別な場所です。
南ドイツはカトリックのエリアであり、同じキリスト教でも彫刻や装飾が豪華な教会がたくさん残っています。戦争により破壊されてしまったものももちろんありますが、地域の人々の努力とサポートにより、たくさんの教会が復興を遂げています。
そして今回訪れたのは、世界遺産にも登録されている「Wies Kirche(ヴィースの巡礼教会)」。南ドイツ、バイエルン州の長閑な村、シュタインガーデンのヴィース地区にある小さな教会です。周りにはほとんど何もなく、なだらかな丘が続く場所にあります。しかし、この場所は年間100万人もの人々が訪れるほど、奇跡の教会として知られているのです。
”奇跡の教会”と呼ばれるようになった由来は、1738年に遡ります。この地域に住んでいたマリアという名の農夫は、シュタインガーデン地区の修道院から「鞭打たれるキリスト」の木彫りの像を貰い受けます。そして6月14日に、この木像が涙を流したと言うのです。この出来事は、奇跡として認定はされていませんが、瞬く間に噂が広がり、たくさんの人がこの農家を訪れるようになりました。1740年に小さな牧草地に礼拝堂を建てましたが、巡礼者は増えるばかり、そこでシュタインガーデン修道院が主体となって、教会を造ることになったのです。1746年から始まり、長い年月をかけ、1757年に完成したと言われています。
設計は、ドイツのロココ建築の巨匠の一人、「Dominikus Zimmermanns(ドミニクス・ツィンマーマン」。この教会の他にも、ブックスハイムの教区教会(1725 – 27)、シーセンのドミニコ教会(1725 – 33)、グーテンツェルの旧シトー会修道院教会(1756 – 59)などが有名です。ビュクスハイムのカルトゥージア修道院教会(1710 – 27)やエレシングの教区教会(1756 – 57)など、中世の建物のバロック化を主導したとも言われています。さらに、多くの漆喰細工や祭壇画を制作し、そのほとんどが兄との共同作業であったとされ、その手腕はもちろんヴィースの巡礼教会にも発揮されています。

私が訪れたのは1月。バイエルン州で久しぶりに雪が降った日です。雪に覆われた大地に、静かに立つ教会は、独特の存在感を放っていました。駐車場から歩いて教会に向かう道すがら、シャッターが降りた小さなスタンドがいくつかあったので、普段は教会に関連するお土産を売っている商店なんだと思います。大きなバスの駐車場もあり、グループの観光客もたくさん訪れているのでしょう。私が訪問した日は、ほとんど人もいなかったので、十分に教会自体を見て回ることができました。
外観は至って素朴ですが、中に足を踏み入れると内部には絢爛豪華な装飾が施されています。優しい色合いで幻想的な雰囲気を放つ内陣は、ヨーロッパ随一のロココ内装と称されるほど。カラフルな大理石に、漆喰の聖人像、金箔がポイントで施されており、華やかさを感じさせます。ディテールを見ていると時間を忘れてしまうほど。静かな教会にしばし立ち、その魅力を体中で感じることができました。決して大きな教会ではありませんが、人々を惹きつける魅力を放ち、尚且つ現在もたくさんの巡礼者が訪れていることを感じさせる教会でした。




















正直にいうと内装だけで言えば、この教会よりも豪華な場所というのはたくさん挙げられると思います。ですが、奇跡が起こったという歴史的背景、そして何もない小さな村にこういった教会が残されていることに、大きな意味があるのだと思います。
ドイツで人気の観光スポット「ノイシュヴァンシュタイン城」の近くでもあるので、ロマンティック街道の立ち寄り場所として機会があれば訪れてみてください。
