コロナ禍の帰省と言うことで、もちろん感染しないように過ごし、陰性証明なども準備して入国しました。ルーマニアでは、日本と同じく外国から入国する場合、待機期間を定めた国がリスト化されています。ルーマニアへの入国時、ドイツは2週間待機の必要がある国からは外れていたため、待機期間もなく過ごすことが出来ました。出国時のドイツでは、コロナにまつわるさまざまな規制が緩和されつつありましたが、レストランやカフェのテラス利用には陰性証明が必要で、飲食店以外のお店も予約や陰性証明の提示が求めれられるなど、まだまだ細やかなルールの元に過ごす感じでした。ルーマニアに来て最初に思ったことは、コロナの緊張度がかなり緩いと言うこと。正直、日本に近いかもしれません。(こう書くと、日本で外出などせずに自粛生活を続けていらっしゃる方はお怒りになるやもしれませんが、さまざまなお店、飲食店が営業していて、なおかつ利用できる、と言う点で共通していると言う意味です。ドイツは全てが本当に営業停止していたので!)お店やモール、公共の乗り物などはマスクが必須ですが、レストランもテラスだけではなく、店内も通常通り営業しており、陰性証明などは求められませんでした。ドイツでは、食料品店やドラッグストアなどの日常生活用品店以外、全て閉まっている期間を長く過ごしていたこともあり、最初は戸惑ったほど。ほとんどが車移動ではありますが、ドイツに比べて私たちも精神的にかなりリラックスして過ごすことが出来ました。
帰省の課題であった緊急の用事も無事済ませることができ、約2年ぶりに会う親族と過ごして一週間ほど経った週末に、ルーマニアの北部に位置するBucovina(ブコヴィナ)エリアに旅行に行ってきました。久しぶりに夫婦ふたりきりの旅行だったこともあり、のんびりできれば良いかなと思っていたのですが、かなり充実した旅行になったのでご紹介したいと思います。旅のアテンドは夫。私はまだまだルーマニア語はほとんど分からないので全てお任せに。コーヒーが飲める場所などのみピックアップして出かけました。
最初に立ち寄ったのは、塩の鉱山です。ルーマニアは、岩塩が豊富なことで知られており、現在も稼働している塩鉱山はもちろん、発掘が中止された鉱山の中に、博物館や遊園地が作られていたり、塩鉱山は呼吸器系の治療にも適していると言うことで、洞窟療法や気孔療法を行う設備を有する鉱山もあるそうです。
私たちが訪れたのは、Casica mine (カチカ鉱山)という、現在も稼働中の塩鉱山です。現役と言うことで、洞窟内はガソリン臭で満ちているので、小さいお子さん連れだとなかなか厳しいかもしれません。マスクを付けていたので、いくらか軽減されますが、それでもかなり強い匂いなのでご注意を。急な階段をひたすら地下に降りていく途中、壁に塩の結晶があったり、岩を削って彫刻が施されていたり、期待度が高まります。洞窟内は温度が低いので夏場であってもカーディガンやジャケットなどを持っていた方がいいかもしれません。採掘場ではありますが、祈りのための大きな祭壇があったり、フットサル場やダンスホール、小さな博物館も有していて、日本の金山などとは違った面白さがありした。その後近くのレストランでランチを取り、目的地へ移動します。
今回の旅の目的地のブコヴィナ地方は、ルーマニアの中でも特に伝統色が強いことで知られており、中でも15〜16世紀にかけて造られた修道院群は、世界遺産にも登録されています。塩の鉱山の後に立ち寄ったのも、世界遺産に登録されている修道院Voronet Monastery (ヴォロネツ修道院)でした。これらの修道院は、15世紀にこの地方を治めていたモルドヴァ公国のシュテファン大公により建設されたと言われています。当時、ヨーロッパへの覇権拡大を目論むオスマントルコ帝国は、ルーマニアにも侵攻。周りの国々がオスマントルコに陥落する中、モルドヴァ公国も幾度となく襲撃に合います。数々の激戦を繰り広げましたが、モルドヴァ公国はオスマントルコに陥落することなく独立を保ったと言われています。そしてこれらの戦いに勝利する度に、シュテファン大公は神の加護に感謝、そして記念を意味して修道院を建てたと言われているのです。
Voronet Monastery は、1488年に建てられたと言われており、中世のモルドヴァを代表する建築と高い評価を得ています。修道院の近くには、広い駐車場があり、そこから参道のように土産物屋さんが軒を連ねる通りを抜けると、修道院にたどり着きます。徒歩5分程度の道のりです。修道院は、防衛面もあり高い塀で囲まれています。彫刻が施された大きな木の扉を抜けると、真っ先に目に飛び込んできたのが、敷地内の中心に建てられた聖堂(教会堂)です。決して大きくはありませんが、壁一面に青をベースにしたフレスコ画が施されており、圧倒的な存在感を醸しだしていました。入り口から正面の壁は、服装や装飾が異なる聖人が無数に描かれており、床上から軒下まで、細やかな図柄が一面に書き込まれています。ちなみに、ベースとなっている青色は、現代科学でも解明できないと言われているそうで、”Voronet Blue”と呼ばれているのだとか。壁画は経年の風雨により一部は判別できない状態ではありますが、ラピスブルーのように濃い色の場所もあり、ドリーミーな装飾も相まって、なんとも神秘的です。まずは一周ぐるりと壁画を堪能しました。東西南北の壁に描かれている図柄は一様ではなく、入り口から入った正面は聖人一人一人の肖像、裏側は儀式や天国と地獄をモチーフにした構図で意味はわからなくとも圧倒される美しさ。
聖堂の中に足を踏み入れると、外壁と同様に上から下までぎっしりとフレスコ画が描かれ、自然と背筋が伸びるような、神聖な雰囲気に包まれています。特に聖堂の最奥は、天井の一番高い場所にキリストが描かれ、見つめられているかのような気分に。聖堂の中は撮影禁止ですが、インスタグラムなどでプロのカメラマンが撮影した画像などが紹介されているので、興味がある方は探してみてください。
私は、キリスト教に限らず、日本で言えばお寺や神社など、宗教建築が大好きです。これまでも色々な国を旅する中で、たくさんの教会を訪れて来ました。しかしそのほとんどがカトリックやプロテスタント。おそらく、一般的に教会をイメージする場合、入り口から入って両側に信者のための椅子があり、正面に祭壇。大きな教会であれば巨大なパイプオルガンが背後にある、と言うイメージだと思います。
これまでにご紹介した通り、ルーマニアは同じキリスト教と言っても、Orthdox Church、つまりルーマニア正教会を信仰する人が多数で、歴史的に評価されている教会もそのほとんどが正教会の建築物に当たります。ルーマニア正教では、聖堂の一番奥に聖所(神品とその補助者・修道士など男性のみが入れる場所、内陣)と信者が祈祷する場所を隔てる為の壁・聖障があり、その聖障は彫刻やイコン(聖画)で彩られています。サイドの壁に沿って、信者が祈るための椅子が設置されています。ただし、ルーマニア正教の祈りの方法は立っなままで行われるため、椅子は足の悪い方や高齢の方が使用するものとなっています。聖堂の造りを始め、装飾はもちろん祈り方の作法においても、カトリックやプロテスタントとは異なり、そういった宗教間の違いを感じることも醍醐味ではないでしょうか。
敷地内には、この教会堂と修道士・修道女が生活するための建物も併設されています。もちろん中には入れませんが、敷地内では各々が作業を行っており、入り口付近の売店にも立っていらっしゃいます。売店では、イコンやクロスなど、宗教的な意味合いの濃いものから、ポストカードなどお土産にもぴったりの品も売っていました。私は、小さなイコンと、ポストカード数種、手首につけるクロスを購入。
駐車場への道すがら、かわいい刺繍製品を並べているお店があり、店先では高齢のオーナーが実際に刺繍を施していらっしゃいました。ブコヴィナ地方では、こういった手作業の刺繍製品、特にルーマニアの民族衣装・ie(イエ)が有名です。今でも村々の女性は手作業で刺繍を施しているそうで、お土産屋さんやローカルマーケットなどに並んでいます。ただし、手作業の商品は日本円でもゆうに一万円を超える商品がほとんどで、安価な中国製も出回っているので購入時は注意が必要です。私も手作業のものが欲しかったのですが、今回はテーブルランナーとテーブルマットを購入しました。クリスマスやイースターなど、特別な日に使いたいと思います。
その後は、宿泊先のペンションにチェックイン。コロナのためか、宿泊客はわたしたちのみ。おしゃべり好きで親切なオーナーが営むこじんまりとしたペンションで、敷地内には子ども用トランポリンや卓球台(ルーマニアでは意外とポピュラーなんです!)、BBQなどの設備も整っていました。冬季は雪に覆われるそうですが、深夜にキツネが遊びにきたこともあるそう。明日の朝食を予約して、1日目は就寝しました。


































